一級建築士事務所 設計本舗・W
日記

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時間旅行

更新日: 2010年9月20日

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 記録的な猛暑もおさまり、ようやく過ごしやすくなりました。
遅ればせながらもいよいよ秋本番。スポーツに食欲に芸術に、と忙しい方も多いはず。
さて、写真は土曜日に開催された武蔵国分寺薪能の一コマ。例年この時期に行われているのですが、チケットの入手方法や募集時期がわからず、一度も参加することができませんでした。今年は、市報をこまめにチェックしていたおかげで初めて入場券を手にすることができ、ようやくこの日を迎えました。当日は初めての人にもわかりやすいように講師の先生を招いて鑑賞会の予習会も開かれ、身近に能面に触れる機会もありました。驚いたのはその面の力、机の上に置かれていたのですが見学者の中に「つけてみたい」と言う方がいてご好意によりつけられたのですが、面を顔に当てるやいなや、それまで木彫りの面であった物が命を吹き込まれたように精気をもち、妖しく輝き出すではありませんか。千年の歴史に培われた本物の持つ力を見た思いでした。

講習会も盛況のうちに終了し三々五々いざ会場へ。会場は市の史跡、武蔵国分寺跡地特設会場。昨年は雨にたたられたようですが今年は薄曇。穏やかに風も吹き、まさに鑑賞日和。
一時間前に着いたこともあり舞台中心の前から5列目に陣取り、ハイボール片手に待つこと一時間。今年は姉妹都市の佐渡市から佐渡鷺流狂言研究会、佐渡能楽連盟の方を招いての公演。まずは両市長の挨拶、さらに午後の先生の解説と続きいよいよ火入れ式。この頃にはあたりももうすっかり暮れて、今か今かと期待も高まります。両市長の持つ松明からかがり火に火が移されると時間は一気に遡り、天平の時代にタイムスリップ。パチパチと音をたてて燃え上がる炎の中にベンガラ色に輝き浮かぶ七重塔の影。コマ撮りのような緩やかな能の動きの一瞬の隙間に千年昔が重なって見えてきます。
悠久の歴史を重ねたこの地ならではの楽しみ、3時間あまりの「時間旅行」でした。