一級建築士事務所 設計本舗・W
日記

ARCHIVE

春の便り

更新日: 2013年4月7日

kugini

台風並みの猛威を振るった爆弾低気圧も予想以上の速さで駆け抜け東京では思わぬ青空の日曜となりました。風は相変わらず強くわずかに残った桜もこれで最後となりそうですが、この風が暖かい空気を運んで来て半袖でも十分な気温になっています。

さて、写真は「いかなごの釘煮」神戸に住む叔母が送ってくれた物。ご存じ方も多いと思いますが釘煮は神戸の春の味覚としてどこの家庭でも作られる春の風物詩。阪神大震災の年にボランティアで現地に出向き、空いた時間に被災していた叔父家族を見舞いに行ったのがきっかけでその春から送って来てくれます。あの釘煮は叔父家族の再出発への気持ちを込めた便りだったのかもしれません。この釘煮、実は私はこれをもらうまで一度も口にしたことはありませんでした。私の育った京都の山間ではもちろん玉筋魚(イカナゴ)などないのですが、食文化としては京都から入ってくる「ちりめん山椒」が一般的で釘煮を食べる習慣はありませんでした。ましてや東京に出てきてからですから、ちりめん山椒からも離れており届いた時には何なのかわからなかったのが本当のところで、東京にすっかり馴染んでいた私にとっては佃煮としか見えませんでした。受け取った時のお礼にも佃煮と書いた記憶がありますから、手紙を受け取った叔母はさぞかしがっかりしただろうなあと今更ながら思います。見た目には色の濃い薄いはあるもののパッと見同じように見える物ではありますが、そこには作り手の心だけでなく、それぞれの地域の文化も炊き込まれている事を感じます。今では桜にならぶ我が家の大事な春の便りです。