一級建築士事務所 設計本舗・W
日記

ARCHIVE

今でしょ!

更新日: 2013年4月21日

hiragusi

 カミサンの手術の間、少し時間ができたので病院の近くを散策しました。前回の日記で書いた病院の脇に流れる玉川上水の遊歩道を気の向くままにブラブラ。写真は、散策路沿いにある平櫛田中(ひらくし でんちゅう)彫刻美術館と隣接する田中の終の棲家となった邸宅の玄関脇の写真です。館内の作品を一通り見学して帰ろうとした時に、目にした「見学できます」の札につられて潜戸を潜ったところで目にしたのがこれ!何やらキノコのお化けのような物。見ようによっては宮崎駿監督の大ヒット作「隣のトトロ」でバス停にたたずむトトロのようにも見える。異次元に迷い込んだような錯覚を覚える。写真は邸宅の玄関から見た景色ですが入口となる潜戸はこの写真の右手、トトロの右奥にあたり、そのため潜戸を抜けて最初に目にするものがこれになります。前庭隅に植えられた杉の木の下に雨宿りでもするかのように寄り添って佇んでいます。上に乗せられた傘が菅笠のようで傘を被った姿は傘地蔵のようにも見えてきます。このどっしりとした存在感と傘の軽やかな感じが対照的でユーモラスでもあり感動的でもあります。平櫛田中には申し訳ないですが、この美術館で目にしたものの中で最も心を奪われた物は何を隠そうこれでした。さて、ではこれはいったい何なのかと言えば、彫刻のための原木だそうです。こうやって何年も乾燥させ、十分に乾燥したものだけが彫刻の材料となるのでしょう。因みにこの木は田中が百歳を超えてから用意された物とのこと。こうして田中も毎日この景色を眺め内なる声に耳を傾けたのでしょうが、この存在感に負けない物を彫上げるにはさぞかし強いプレッシャーもあったろうと思います。まさに真剣勝負、一寸の気の緩みも許されない緊張感が漂います。さてこの平櫛田中、この地を最後の地としましたが107歳で亡くなるまでここで創作活動に励んだとのこと。この景色があればこその気がします。この人智を凌ぐ存在感が田中を107歳まで衝き動かしたような気がします。こうして在りし日の田中とこの木に思いをはせると、「おい!そこのハナ垂れ小僧まだこれからだろう!精進しろよ。」の声とともにあのブームになっているCMのフレーズが響いてきます。じゃあ何時から「今でしょ!」